ここ最近ずっと嵌っていたゲームタイトルがある。『ELDEN RING』だ。『ELDEN RING』は中世ヨーロッパ世界のような架空のダークファンタジー世界を舞台にしたオープンワールドアクションRPGであり、プレイヤーはその世界の中でどのような行動をするのか選択を迫られる。その中でNPC(操作不可能な登場人物)たちのストーリーが実にTVドラマのように感じられた。もう一度言うが、『ELDEN RING』は重厚なダークファンタジーな世界観として世の中で宣伝されており、決して一軒家に住む三世代家族が舞台ではないのだが、それでも心温まるホームドラマ的な要素が節々に感じられる。
まず初めに神人のラニ。彼女はデミゴッドすなわち神と人の混血として生まれながらもある理由のため、己の肉体を捨て、姿を眩ませるといった行動をとった白い衣をまとった雪の魔女なのだが、己の肉体を捨てた理由が「神の器になりたくなかったから」つまり、神である父ラダゴンの後釜として舞台である「狭間の地」に「神として君臨したく無かった」からである。神になると何の都合が悪いのか、と気になる方も多いことだろう。それは「自身が自由の身ではなくなる」からだ。狭間の地で神となるという事は狭間の地の外に存在する上位存在が狭間の地を支配するための傀儡となることだからというわけだ。
これに焦った父ラダゴンは妻レナラとの婚姻関係を捨て、自身のみによる単一生殖を実行することを決意する。これによりカーリア王家の血を引くラニの母レナラは傷心し、「生まれなおしの秘術」に耽ってしまう。ちなみにラダゴンがレナラとともに捨てたペットの「ラダゴンの赤狼」も「魔術学院レアルカリア」のボスとしてプレイヤーに立ちはだかる。
ゲーム開始当初の神である女王マリカにはマリケスという従者が存在するがマリケスはラニが肉体を捨てるため企てたゲーム序盤で触れられる「陰謀の夜」によって「死のルーン」を盗まれた被害者である。マリケスは普段は「獣の司祭」として狭間の地の西「グレイオールの竜塚」にぽつねんとしているが彼の住居の手前の橋が「ファルム大橋」であり、プレイヤーが彼と戦う場所が「崩れ行くファルム・アズラ」であるため未練タラタラである。
このゲームは「陰謀の夜」によって「ゴッドウィン」が「最初の死者」としてラニたちに殺されるところから始まる。それは彼女が上位存在の傀儡である神になりたくなかったからというとても人間的な理由である。従いたくない運命が目の前に存在するときそれに抗おうとする人間は少なからず居るだろう。彼女は神の子であったがやりたくないことを拒絶するというとても人間らしい理由でこのゲームを始めたのだ。